
性的指向、性自認および性表現
性的指向、性自認、性表現の違いにかかわらず、全ての人には皆平等な権利が与えられています
レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人々(LGBT)は、自分がLGBTであることを隠さずに生活できなければなりません。ノルウェーでは各当局が差別を防ぐ様々な取り組みを行っています。ノルウェー政府の目標は、性的指向、性自認または性表現に基づく差別と闘い、LGBTの人々の権利を強化することです。
国民の意識とLGBTの人々の生活状況は、年々良い方向へ変化しつつあります。しかし、最新の調査結果によれば、この分野においては依然として、焦点を絞った体系的な取り組みによる更なる改善が必要とされています。
平等および差別禁止に関する法律(Act relating to equality and a prohibition against discrimination)が2018年1月1日に施行されました。
性的指向、性自認および性表現に基づく差別禁止に関する法律(Act relating to the prohibition against discrimination on the basis of sexual orientation, gender identity and gender expression)―2014年1月1日施行
この法律は、性的指向、性自認または性表現に基づく差別を総合的に禁止するものであり、その規定は家庭生活と私的領域を除く、社会のあらゆる領域に適用されます。
婚姻法(Marriage Act)―2009年1月1日施行
この法律では、性的指向に関係なく全ての人に結婚する権利を認めています。ノルウェー教会および他の宗教は、結婚式を執り行う権限を与えられています。但し義務を負うものではありません。

男女平等
ノルウェー政府は、あらゆる人のために平等を促進し差別禁止策を強化することに力を注いでいます。差別のない社会は、平等と機会均等の前提条件の一つです。そのためには、性別に基づく差別を防ぎ、有効な法的保護を確保する、強固で明瞭な法律が必要です。
女子差別撤廃条約(CEDAW)
女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する国連条約(女子差別撤廃条約:CEDAW)は、1979年12月18日に国連総会において採択され、1981年9月3日に発効し、189カ国に批准されています。ノルウェーは、1981年5月21日にこの条約を批准しました。
女子差別撤廃条約の選択議定書は1999年10月6日に採択され、ノルウェーはこれを2002年3月5日に批准しています。女子差別撤廃条約は、先の男女平等法が成立した際にノルウェーの法律の一部となりました。2009年6月19日、同条約は人権法に盛り込まれ、国内の他の法律に優先されるものとなっています。
平等・差別禁止法
性別に基づく差別を受けない権利は、さまざまな条約に明記されている人権の一つです。差別禁止に関する法律は、この権利を守る最も重要な手段となります。2018年1月1日に施行された平等および差別禁止に関する法律(Act relating to equality and a prohibition against discrimination:平等・差別禁止法)は、性別、民族、障がい、性的指向、性自認、性表現に基づく差別の禁止などを定める4つの旧法に取って代わりました。
平等・差別禁止法は、性別、妊娠、出産または養子縁組に関連した休職、育児・介護責任に基づく差別からの保護を規定するものです。同法の目的は、男女平等の促進です。教育と労働、そして文化・職業能力開発の機会は男女を問わず平等に与えられることとしています。平等・差別禁止法の準備作業では、女性の地位向上が同法の主なねらいと明記していましたが、結果として男女共に同法による保護の恩恵を受けることとなります。この法律は、雇用主、社会的パートナー、公権力に対し、平等への取り組みに積極的に関与することを求めています。
平等・差別禁止オンブッド法(Equality and Anti-Discrimination Ombud Act)
2018年1月1日、平等・差別禁止オンブッドおよび差別禁止裁定委員会に関する法律(Equality and Anti-Discrimination Ombud Act:平等・差別禁止オンブッド法)が新たに施行されました。同法は、平等促進の役割を担う平等・反差別オンブッド(Equality and Anti-Discrimination Ombud)の立場を強化し、差別禁止裁定委員会(Anti-Discrimination Tribunal)の設立を通じて差別禁止に関する法律の確実な執行に寄与します。
平等・反差別オンブッドは、社会のあらゆる局面における性別に基づく差別を防ぎ、平等を促進することを使命としています。市民は誰でもオンブッドに直接コンタクトを取り、平等と差別禁止に関する法律について相談することができます。平等・反差別オンブッドは、基本的人権に関する国連条約を当局が順守しているかどうかを監視しています。差別禁止裁定委員会は、法律違反に対する訴訟を審理する機関です。同委員会は、雇用訴訟における是正命令と、特定の種類の訴訟における賠償措置を裁定する権限を与えられています。
2020年1月1日施行の新たな法改正により、差別禁止裁定委員会は、従来は裁判所によって審理されていたセクシャルハラスメントに関する訴訟を審理する権限を与えられました。この改正法により、平等・反差別オンブッドのセクシャルハラスメント被害者向けの情報提供ならびに支援サービスも強化されます。
平等の実践―男女の機会均等
白書『2015~16年平等の実践 - 男女の機会均等(Meld. St. 7 (2015-2016) Equality in practice - equal opportunities for women and men)』(ノルウェー語のみ)
本白書は、男女間の平等をテーマにしたものです。ノルウェー政府の平等政策では、男女が選択の自由を行使することを阻む障壁を撤廃することを目指しています。男女は機会と権利を平等に持たなければならず、社会は男女が -未成年も成人も- それぞれの機会を最大限に活用することを可能にしなければなりません。本白書では、幼少期および教育、雇用、暴力・暴行からの保護、ビジネス、健康といった主要な分野における平等に関する課題のほか、平等に対するノルウェーの国際的な取り組みについて論じています。
文化・平等大臣は毎年ノルウェー国会に、あらゆる分野における平等と多様性を促進する取り組みの状況を報告しています。
政策に平等の観点を
中央・地域・地方自治体レベルでのあらゆる政策の策定に平等の観点を組み込むことは、ノルウェー政府の平等政策の重要な戦略の一つです。中央レベルでの取り組みは、各部門の平等戦略にも左右されます。各省が担当部門における平等の取り組みに対する責任を担い、平等政策の調整は文化省の責任で行われます。
平等を組み込む主な手段には、平等と差別禁止に関する法律に規定された活動・報告義務、公式調査・報告書に関する指示(Instructions for Official Studies and Reports)があります。
活動・報告義務
2020年1月1日、活動と報告の義務を強化する新たな法律条項が施行されました。
これまで同様、公権力は社会のあらゆる場面における平等を促進する取り組みに積極的に関与する義務を負います。更に加えて、サービス提供者としての職権と役割の行使に関して根拠を示す義務も負うことになりました。
雇用主は引き続き、それぞれの事業における平等を促進する取り組みを積極的に行うことが求められます。従業員数が50人を上回る公共事業および民間事業では、具体的な対策(所定の活動義務)を採用することが求められます。要求がある場合は、従業員数が20~50人の民間事業も同様の義務の対象となります。これらの雇用主は2020年1月1日付で、性別ごとの賃金調査を実施し、強制的パートタイム労働の利用についての調査義務も負うことになります。こうした活動は、従業員と協議のうえ実施されなければなりません。雇用主はまた、平等に対する取り組みに関する報告書を提出する義務も負い、それぞれの事業における平等の実際の状況と、具体的な活動内容を説明しなければなりません。平等・差別禁止法は労使間でそれぞれの活動領域における平等を積極的に促進する義務を課しています。
同法では、ハラスメントおよびセクシャルハラスメントに関連した活動義務に関する規定条項も独立して設けています。雇用主、各種組織および教育機関は、それぞれの責任領域においてハラスメントおよびセクシャルハラスメントを防ぐ取り組みを行うことが義務付けられています。
誰一人として、信仰、肌の色、民族、性別、性的志向、性自任、性表現などを理由に憎悪(ヘイト)やネット上での攻撃の対象になるべきではありません。ヘイトは、個人、集団、社会全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ノルウェーでは、言論の自由が個人の価値として認められ確立しています。しかし、他者に対する憎悪を拡散する発言は容認されてはなりません。特定の少数派に向けた憎悪や差別的な発言は、法律で禁止されており訴訟の対象となります。
子どもや若者は成人よりはるかに頻繁にサイバーヘイトを経験しています。彼らは、自らを表現できる安全なオンライン環境で成長する権利があります。ノルウェーのメディア担当当局は、小学校5年生以上の生徒に、サイバーヘイト、オンラインの活動、民主主義に関する教育や討論のためのリソースを提供しています。
ノルウェー政府は、異なる分野における差別撲滅の行動計画を整備し、サイバーヘイトと闘うための活動を強化しています。

障がい者政策
障がいを持つ人々も、社会の一員として変わらず同等の権利を有しています。障がい者政策の根幹を支えるのは、平等、対等な立場、自己決定、協力、参加、包摂です。
平等と差別禁止に関する国の法律はノルウェー文化・平等省の管轄です。この法律では、障がいを理由とする差別を禁止しています。文化省は、障がいを持つ人々に関する政策を他省・部局と連携して調整する包括的な責任を担っています。障がいを持つ人々の平等に関するノルウェー政府の2020~30年の戦略は、8省にまたがる9人の大臣の署名により発行されました。
非政府組織(NGO)は、行動計画や戦略の策定をはじめとする当該政策プロセスに対して重要な貢献を果たしています。
文化大臣は毎年、ノルウェー障がい者団体連盟(Norwegian Federation of Organisations of Disabled People:FFO)、ノルウェー障がい者フォーラム(Norwegian Forum of Disabled Peoples’ Organizations:SAFO)、ノルウェー若年障がい者協会(Norwegian Association of Youth with Disabilities)ならびに当該部門の大臣との政策円卓会議を主催し、関連する課題について議論を行っています。また、上記の3つの組織は、ノルウェー子ども・青少年・家族局(Bufdir)と共同で12月3日の国際障がい者デーを記念する年次イベントの準備も手がけています。
ノルウェー子ども・青少年・家族局(Bufdir)
Bufdir(The Norwegian Directorate for Children, Youth and Family Affairs)は、障がい者政策を調整する文化省の専門部局です。障がいを持つ人々の生活条件と環境の改善に取り組んでいます。
Bufdirの任務:
- 障がいを持つ人々を代表する組織ならびに障がいを持つ人々のための余暇活動に対する助成金の交付。中央政府が任意団体に交付するすべての助成金のリストとその詳細は、ノルウェー政府公式サイトの専用ページ(ノルウェー語のみ)に掲載されています。助成金の制度と申請書式に関する情報は、こちらで確認できます(ノルウェー語のみ)。
- 関連データおよび統計をまとめ、障がいを持つ人々の状況を文書化すること。2015年には、生活状況をまとめたウェブサイトが開設されました。2018年には、障がいに焦点を絞った地方自治体ごとのモニタリング制度が発足しました。(ノルウェー語のみ)
- 障がいを持つ人々に関する情報源として障がい者のための法的保護プログラムを運営すること(ノルウェー語のみ)。
ノルウェーにおける男女平等の主な出来事
同性愛の差別禁止から約30年をかけて異性婚・同姓婚の平等に至ったノルウェー。この間、性の多様性の保護および差別との闘いのため、様々な措置が段階的にとられてきました。