
政府は2024年セクシャルハラスメントに関する白書と、国内初の男女間のジェンダー平等戦略を発表しました。
セクシャルハラスメントに関する白書
一般的に女性は特にセクシャルハラスメントの被害を受けやすい状況にあります。また、若者、LGBT+の人々、障がいを持つ人々、そして少数民族に属する人々は、一般の人々より被害のリスクにさらされています。ノルウェー政府は、セクシャルハラスメントに対抗する姿勢を明確に示しており、 #MeToo運動を契機に、セクシャルハラスメントのない社会の実現に向け今こそ連携し、取り組みを強化する時と考えています。
白書には、今後の取り組みの指針となる7つの目標と、それに対応する措置が示されています:
・平等な社会
・セクシャルハラスメントに関する適切かつ効果的な指導と執行
・セクシャルハラスメントのない安全で働きがいのある人間らしい労働生活
・セクシャルハラスメントのない教育環境
・セクシャルハラスメントのない文化・余暇活動、スポーツ、ボランティア活動
・セクシャルハラスメントのないデジタル環境
・セクシャルハラスメントに関する知識と研究の充実
男女平等戦略2025-2030
政府が発表する男女平等に関する初の戦略で、男女平等に関する主要課題への対応に向けた国家的な取り組みを調整するための枠組みとして機能します。政府の包括的な取り組みの方向性を示し、以下6つの主要目標が含まれています:
・経済的自立と平等な労働生活
・男女別教育選択肢の軽減
・暴力、レイプ、セクシャルハラスメント、オンライン性虐待のない社会
・ネガティブな社会統制と権威に起因する暴力からの解放
・健康の向上
・平等のための効果的な仕組み
リンク(ノルウェー語):
・Meld. St. 7 (2024-2025) white paper– On Sexual Harassment (セクシャルハラスメントに関する白書)
・Strategy for Gender Equality between Women and Men 2025-2030 (男女平等戦略 2025-2030)

2022年6月25日に発生した性的マイノリティーをターゲットにした襲撃事件は、すべてのLGBTQの人々にとってより安全、平等で、包摂的な社会を実現するために、依然として更なる政治的努力が求められることを痛切に思い知らされる出来事でした。ノルウェー政府は、性的指向、性自認、性表現、性特性に基づくあらゆる差別との闘いを強化しています。
ノルウェー政府は、2023年2月に、ジェンダーとセクシュアリティの多様性に関する行動計画を発表しました。この中には、LGBTQの人々の権利を保障し、生活の質を向上させ、ジェンダーとセクシュアリティの多様性の受容を促進するための49の対策が含まれています。
>The Norwegian Government's Action Plan on Gender and Sexual Diversity (2023–2026)(ジェンダーとセクシュアリティの多様性に関する行動計画)
性の多様性の保護、および差別との闘いのためにノルウェーで取られてきた様々な取り組みについて:
>ノルウェーの性の多様性(LGBTI)の歩み

男女平等
ノルウェー政府は、あらゆる人のために平等を促進し差別禁止策を強化することに力を注いでいます。差別のない社会は、平等と機会均等の前提条件の一つです。そのためには、性別に基づく差別を防ぎ、有効な法的保護を確保する、強固で明瞭な法律が必要です。
女子差別撤廃条約(CEDAW)
女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する国連条約(女子差別撤廃条約:CEDAW)は、1979年12月18日に国連総会において採択され、1981年9月3日に発効し、189カ国に批准されています。ノルウェーは、1981年5月21日にこの条約を批准しました。
女子差別撤廃条約の選択議定書は1999年10月6日に採択され、ノルウェーはこれを2002年3月5日に批准しています。女子差別撤廃条約は、先の男女平等法が成立した際にノルウェーの法律の一部となりました。2009年6月19日、同条約は人権法に盛り込まれ、国内の他の法律に優先されるものとなっています。
平等・差別禁止法
性別に基づく差別を受けない権利は、さまざまな条約に明記されている人権の一つです。差別禁止に関する法律は、この権利を守る最も重要な手段となります。2018年1月1日に施行された平等および差別禁止に関する法律(Act relating to equality and a prohibition against discrimination:平等・差別禁止法)は、性別、民族、障がい、性的指向、性自認、性表現に基づく差別の禁止などを定める4つの旧法に取って代わりました。
平等・差別禁止法は、性別、妊娠、出産または養子縁組に関連した休職、育児・介護責任に基づく差別からの保護を規定するものです。同法の目的は、男女平等の促進です。教育と労働、そして文化・職業能力開発の機会は男女を問わず平等に与えられることとしています。平等・差別禁止法の準備作業では、女性の地位向上が同法の主なねらいと明記していましたが、結果として男女共に同法による保護の恩恵を受けることとなります。この法律は、雇用主、社会的パートナー、公権力に対し、平等への取り組みに積極的に関与することを求めています。
平等・差別禁止オンブッド法(Equality and Anti-Discrimination Ombud Act)
2018年1月1日、平等・差別禁止オンブッドおよび差別禁止裁定委員会に関する法律(Equality and Anti-Discrimination Ombud Act:平等・差別禁止オンブッド法)が新たに施行されました。同法は、平等促進の役割を担う平等・反差別オンブッド(Equality and Anti-Discrimination Ombud)の立場を強化し、差別禁止裁定委員会(Anti-Discrimination Tribunal)の設立を通じて差別禁止に関する法律の確実な執行に寄与します。
平等・反差別オンブッドは、社会のあらゆる局面における性別に基づく差別を防ぎ、平等を促進することを使命としています。市民は誰でもオンブッドに直接コンタクトを取り、平等と差別禁止に関する法律について相談することができます。平等・反差別オンブッドは、基本的人権に関する国連条約を当局が順守しているかどうかを監視しています。差別禁止裁定委員会は、法律違反に対する訴訟を審理する機関です。同委員会は、雇用訴訟における是正命令と、特定の種類の訴訟における賠償措置を裁定する権限を与えられています。
2020年1月1日施行の新たな法改正により、差別禁止裁定委員会は、従来は裁判所によって審理されていたセクシャルハラスメントに関する訴訟を審理する権限を与えられました。この改正法により、平等・反差別オンブッドのセクシャルハラスメント被害者向けの情報提供ならびに支援サービスも強化されます。
政策に平等の視点を
中央・地域・地方自治体レベルでのあらゆる政策の策定に平等の視点を組み込むことは、ノルウェー政府の平等政策の重要な戦略の一つです。中央レベルでの取り組みは、各部門の平等戦略にも左右されます。各省が担当部門における平等の取り組みに対する責任を担い、平等政策の調整は文化・平等省の責任で行われます。
平等を組み込む主な手段には、平等と差別禁止に関する法律に規定された活動・報告義務、公式調査・報告書に関する指示(Instructions for Official Studies and Reports)があります。
活動・報告義務
2020年1月1日、活動と報告の義務を強化する新たな法律条項が施行されました。
これまで同様、公権力は社会のあらゆる場面における平等を促進する取り組みに積極的に関与する義務を負います。更に加えて、サービス提供者としての職権と役割の行使に関して根拠を示す義務も負うことになりました。
雇用主は引き続き、それぞれの事業における平等を促進する取り組みを積極的に行うことが求められます。従業員数が50人を上回る公共事業および民間事業では、具体的な対策(所定の活動義務)を採用することが求められます。要求がある場合は、従業員数が20~50人の民間事業も同様の義務の対象となります。これらの雇用主は2020年1月1日付で、性別ごとの賃金調査を実施し、強制的パートタイム労働の利用についての調査義務も負うことになります。こうした活動は、従業員と協議のうえ実施されなければなりません。雇用主はまた、平等に対する取り組みに関する報告書を提出する義務も負い、それぞれの事業における平等の実際の状況と、具体的な活動内容を説明しなければなりません。平等・差別禁止法は労使間でそれぞれの活動領域における平等を積極的に促進する義務を課しています。
同法では、ハラスメントおよびセクシャルハラスメントに関連した活動義務に関する規定条項も独立して設けています。雇用主、各種組織および教育機関は、それぞれの責任領域においてハラスメントおよびセクシャルハラスメントを防ぐ取り組みを行うことが義務付けられています。
誰一人として、信仰、肌の色、民族、性別、性的志向、性自任、性表現などを理由に憎悪(ヘイト)やネット上での攻撃の対象になるべきではありません。ヘイトは、個人、集団、社会全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ノルウェーでは、言論の自由が個人の価値として認められ確立しています。しかし、他者に対する憎悪を拡散する発言は容認されてはなりません。特定の少数派に向けた憎悪や差別的な発言は、法律で禁止されており訴訟の対象となります。
子どもや若者は成人よりはるかに頻繁にサイバーヘイトを経験しています。彼らは、自らを表現できる安全なオンライン環境で成長する権利があります。ノルウェーのメディア担当当局は、小学校5年生以上の生徒に、サイバーヘイト、オンラインの活動、民主主義に関する教育や討論のためのリソースを提供しています。
ノルウェー政府は、異なる分野における差別撲滅の行動計画を整備し、サイバーヘイトと闘うための活動を強化しています。
ユニバーサルデザインは、すべての人々が社会にアクセスできるようにするための国家戦略で、文化・平等省が国の政策を調整しています。
ユニバーサルデザイン - 平等、社会、経済の持続可能
ユニバーサルデザインは、全ての市民とノルウェー社会が必要とする人工的構造物に付加価値をもたらします。その主な目的はアクセシビリティを向上し、全ての人に平等なアクセスを提供するソリューションを支援することにより障がい者への差別を防止することです。ユニバーサルデザインは、持続可能な社会・経済にプラスの影響を与えます。政府が目指すのは全ての人が参加できる社会です。優れたアクセシビリティと周囲の安全な環境は、この目標達成のために重要な手段のひとつです。ユニバーサルデザインは、障がいを持つ人々に特に重要となる社会の質です。
政府の取り組み
この分野における政府の取り組みは、セクター毎の責任で行われます。各省庁は、担当分野の戦略・施策のなかにユニバーサルデザインを取り入れます。法制度、規則、基準は重要な手段となり、ユニバーサルデザインが主要分野の法律に反映されます。施策と実行の責任は、各セクターに委ねられています。
ユニバーサルデザインとアクセシビリティに関する規定を定める差別禁止・アクセシビリティ法(Anti-Discrimination and Accessibility Act)は文化・平等賞が所管しています。ユニバーサルデザイン対策資金は、分野別責任の原則に基づき、主に各省庁の一般予算から充当されます。
ユニバーサル行動計画 2021-2025
この行動計画は、主要分野の法律に反映されます。
ノルウェー政府は、社会における人種差別を防止しこれらと闘います。人種差別は、平等な社会と個人の機会の障害の原因になり得ます。人種、宗教、信仰に基づく差別を防止するためには、強固な法的枠組みと、広範かつ的確な取り組みが重要です。
人種、宗教、信仰に基づく差別を防止し、平等を促進するための取り組みは、すべての政策分野および政府のあらゆるレベルに反映されます。文化・平等省はこの取り組みの調整役を担い、各省庁もそれぞれの分野において平等を促進し、差別を防止する独立した責任を負います。
子ども・青年・家族局は、この分野における取組みのフォローアップの役割を担います。
国連人種差別撤廃条約
国連人種差別撤廃条約は、人種、皮膚の色、世系、または民族的出身に基づく差別を禁じています。
この条約は、1965年12月21日に国連総会で採択され、1969年1月に発効しました。ノルウェーは1970年8月6日に留保なしでこの条約を批准しました。この条約は、平等および差別禁止法を通じてノルウェーの法律に組み込まれています。国連人種差別撤廃条約の国内における実施状況は、独立した専門家で構成される国連人種差別撤廃委員会によって監視されています。
包括的差別禁止法
包括的差別禁止法は2018年1月1日に施行されました。この法律は、民族(国籍、世系、肌の色、言語を含む)、宗教、信仰といった要素に基づく直接的および間接的な差別を禁止しています。この法律の目的は、平等を促進し、機会均等と権利を保障し、差別を防止することです。この法律は社会のあらゆる分野に適用されますが、家族生活やその他の個人的な関係においては適用されません。
平等および差別禁止法には、雇用主、公的機関、および労働関係にある組織が平等を積極的に促進し、差別を防止していく義務に関する規定が含まれています。
平等・反差別オンブッド
平等・反差別オンブッド(オンブズマン)は、社会のあらゆる分野における平等の促進と差別の防止に努めます。誰でも、平等および差別に関する法律に関する助言を得るためにオンブズマンに連絡することができます。また、オンブズマンは差別委員会に事案を提起することもできます。
オンブズマンは、公的機関が国連の基本的人権条約を遵守しているかどうかを監督します。
差別禁止裁定委員会は、差別規制違反に関する苦情を執行します。同委員会は命令に関する決定を下す権限を有します。また、進行中の差別、嫌がらせ、報復行為を止め、または再発を防止するために、停止、救済措置、その他の措置を課すことができます。
差別禁止裁定委員会は、法律または規則に違反したと判断した場合、救済措置および賠償を命じることができます。
- Action plan on racism and discrimination – New initiatives 2024 – 2027(人種差別対策行動計画-新イニシアチブ2024-2027)
- Action plan to combat Anti-Muslim racism 2025–2030 - regjeringen.no (反イスラム人種差別と闘うための行動計画 2025-2030)

障がい者政策
障がいを持つ人々も、社会の一員として変わらず同等の権利を有しています。障がい者政策の根幹を支えるのは、平等、対等な立場、自己決定、協力、参加、包摂です。
平等と差別禁止に関する国の法律はノルウェー文化・平等省の管轄です。この法律では、障がいを理由とする差別を禁止しています。文化省は、障がいを持つ人々に関する政策を他省・部局と連携して調整する包括的な責任を担っています。障がいを持つ人々の平等に関するノルウェー政府の2020~30年の戦略は、8省にまたがる9人の大臣の署名により発行されました。
非政府組織(NGO)は、行動計画や戦略の策定をはじめとする当該政策プロセスに対して重要な貢献を果たしています。
文化大臣は毎年、ノルウェー障がい者団体連盟(Norwegian Federation of Organisations of Disabled People:FFO)、ノルウェー障がい者フォーラム(Norwegian Forum of Disabled Peoples’ Organizations:SAFO)、ノルウェー若年障がい者協会(Norwegian Association of Youth with Disabilities)ならびに当該部門の大臣との政策円卓会議を主催し、関連する課題について議論を行っています。また、上記の3つの組織は、ノルウェー子ども・青少年・家族局(Bufdir)と共同で12月3日の国際障がい者デーを記念する年次イベントの準備も手がけています。
ノルウェー子ども・青少年・家族局(Bufdir)
Bufdir(The Norwegian Directorate for Children, Youth and Family Affairs)は、障がい者政策を調整する文化省の専門部局です。障がいを持つ人々の生活条件と環境の改善に取り組んでいます。
Bufdirの任務:
- 障がいを持つ人々を代表する組織ならびに障がいを持つ人々のための余暇活動に対する助成金の交付。中央政府が任意団体に交付するすべての助成金のリストとその詳細は、ノルウェー政府公式サイトの専用ページ(ノルウェー語のみ)に掲載されています。助成金の制度と申請書式に関する情報は、こちらで確認できます(ノルウェー語のみ)。
- 関連データおよび統計をまとめ、障がいを持つ人々の状況を文書化すること。2015年には、生活状況をまとめたウェブサイトが開設されました。2018年には、障がいに焦点を絞った地方自治体ごとのモニタリング制度が発足しました。(ノルウェー語のみ)
- 障がいを持つ人々に関する情報源として障がい者のための法的保護プログラムを運営すること(ノルウェー語のみ)。
同性愛の差別禁止から約30年をかけて異性婚・同姓婚の平等に至ったノルウェー。この間、性の多様性の保護および差別との闘いのため、様々な措置が段階的にとられてきました。
ノルウェーにおける男女平等の主な出来事