性とジェンダーの多様性

同性愛の差別禁止から約30年をかけて異性婚・同姓婚の平等に至ったノルウェー。この間、性の多様性の保護および差別との闘いのため、様々な措置が段階的にとられてきました。

「オープンで寛容な、包摂/受容する社会であること」 - これがノルウェーの目標です。

 

【ノルウェーの性の多様性(LGBTI)の歩み】

1972
男性間の性行為を犯罪としていた刑法の条項が廃止される

1981
同性愛に対する差別とセクシュアルマイノリティに対するヘイトス ピーチが法律により禁止される

1993
登録パートナーシップ法が制定される

2000 
レズビアンとゲイの生活環境に関する初めての白書が発行される

2001
登録パートナーの一方の実子を養子縁組にすることが認められる

2004
住宅法によりレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルに対する差別が禁止される

2008
LGBTの生活の質の向上のため、政府の「行動計画2009-2012」が 策定され、 ニーズに応じた64の具体的な施策が打ち出される

2008
性別による区別の無い新たな「婚姻法」制定、2009年より施行される。
これに伴い登録パートナーシップ法は廃止される。新たな婚姻法では
- 同性のカップルの結婚が認められる
- レズビアンのカップルは人工受精による子どもを持つ権利が認められる
- 同性のカップルが養子縁組をすることが可能

2011 
国立LGBT知識センターが設立される

2013
総合的な「反差別法」制定、2014年施行。これにより性的指向、ジェンダー アイデンティティ(性自認)、ジェンダー表現に基づく差別が禁止される

2014
政府の行動計画(2009-2012)の評価が行なわれ、第一次報告書が発行される

2015
ベルゲン大学図書館にqueerとLGBTの歴史を収集・記録する国立アーカイブ Skeivt Arkivが設立される。個人や組織に関するオンラインのSkeivopediaを編纂

2016
第一次報告書を元に、LGBTIに関する更なる課題を解決するため政府の第二次行動計画(2017-2020)を策定。新たに40の具体的施策が盛り込まれる

2016
出生時に国民登録(National register)に登録された性別と異なる性に属する、と本人が認識する場合、16歳以上は本人が法律上の性別について書類で変更申請を行えるようになる。これにより、医療機関の受診や手術が不要となる(16歳以下の場合は、本人と親権を持つ者が申請を行う)

2017
ノルウェー教会*(ルター派)がすべての教会で同性カップルの結婚式を執り行うことを決定 (*ノルウェー国教会は2017年から非国教会化された)

2018
平等および差別禁止に関する法律(Act relating to equality and a prohibition against discrimination)施行
 

【性とジェンダーの多様性(LGBTI)に関わる法律】 

  •  反差別法: 性的指向、ジェンダーアイデンティティ(性自認)、ジェンダー 表現による差別に対する包括的保護
    *反差別法は社会のあらゆる差別に対する保護に関連する法を集約したもの
  •  婚姻法:  性別による制限の無い婚姻を規定
  •  職場環境法: 差別からの保護、雇用者による反差別活動の義務付け
  •  住宅法: 差別からの保護

   

性とジェンダーの多様性(LGBTI)に関わる主な組織

  •  LDO 平等・反差別オンブッド 
    www.ldo.no
    平等、反差別、ダイバーシティーに関わる苦情に対しアドバイスと勧告を行なう
    オンブズマン。法の遵守を監視する独立組織
  •  BUFDIR ノルウェー子ども・若者・家族局 
    www.bufdir.no
    子ども・若者・家族問題に加え、平等と反差別に関する様々なサービスを行なう公的機関。LGBTIの生活環境に関する年次報告書Fact Bookletを発行
  • LGBT Knowledge Centre LGBT知識センター 
    BUFDIRの下にある機関。政府の行動計画に基づき設立され、LGBTに関する正しい知識を普及し、LGBTIのより良い生活に資することを目的とする
  • SKEIVT ARKIV queerとLGBTに関する国立アーカイブ
    http://skeivtarkiv.no/en
  • FRI (The Norwegian Organization for Sexual and Gender Diversity) https://foreningenfri.no
    LGBTIに関するノルウェー最大の会員組織NGO。国の助成を受けて各地でプライドを主催するほか、政府や省庁への助言を行なう。国際的活動も活発に行い、世界のプライドと連帯
  • Skeive Ungdom (Queer Youth) 
    www.skeivungdom.no
    30歳以下のLGBTI、セクシュアルマイノリティを対象としたNGO。平等と法的権利を確かなものとし、全国の若い当事者の社会的役割の創出を目的とする。学校訪問プロジェクト”Restart”を実施

    
【NGOの役割】 
公的機関による平等と反差別に向けた活動を補完するものとして、ノルウェーではNGOが大きな役割を担って貢献しています。社会がよりオープンになった結果、LGBTIの当事者によって利益団体が設立され、行政のパートナーとしても積極的にその役割を果たしています。また、このようなNGOを対象とした政府の助成金制度があります。


【国際的責任】
国連によれば、性的指向やジェンダーアイデンティティ(性自認)を理由とした暴力や差別が世界各地で起きていることが確認されています。差別を受けている人々は日常生活で様々な障害に直面し、全ての人に認められるべき基本的権利の享受を社会から否定されているのです。

ノルウェー外務省では、大使館などの在外公館を通じ、世界各地でLGBTIの人々の人権を促進するための努力を持続し、体系的に強化していくためのガイドラインを作成しています。また政府は国連をはじめとする組織や公的機関による「非差別と人間の尊厳を尊重する活動」を支援しています。