Statsraad Lehmkuhl
Statsraad Lehmkuhl Photo:Richard Sibley

帆船スターツロード・レムクル号による世界一周航海 2021-2023

ノルウェーの大型帆船スターツロードレムクル号が、世界一周航海「ワン・オーシャン・エクスぺデション」を終え本国ベルゲンに帰港しました。

Statsraad Lehmkuhl
Statsraad Lehmkuhl returns to Norway, April 2023

2023年4月15日、約20カ月に及ぶ世界一周航海を完遂した帆船を一目見ようと、ベルゲン港に大勢の市民が集まり歓迎ムードで溢れました。当日はハーラル国王も来場し、ベルゲン市長、国連海洋特使らと共に長旅を労いました。

Statsraad Lehmkuhl, Bergen 2023
Statsraad Lehmkuhl, Bergen 2023

2021年から2030年は国連が定めた「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」です。「ワン・オーシャン・エクスペディション」は、この取り組みを支援し実施されました。持続可能な開発における海洋の役割の重要性に光を当てることを目的に掲げ、若者、科学者、国際的なリーダーが航海に参加。教育、科学、技術を通じて共に海に関する新しい知識を構築していきました。

2021年8月ノルウェー出発後、世界各国37港を訪問し55,000海里超航海を果たしました。昨秋にはアジア初の港となる横浜、次いで那覇、石垣に寄港しました。

ベルゲンではレムクル号の帰港に合わせ「ワンオーシャンウィーク」と題し国際会議が計画されました。持続可能な海洋のための、国境を越えた取組みの強化と継続の重要性を再確認します。

 

スターツロード・レムクル号 歴史的背景と名前の由来

Statsraad Lehmkuhl. history
写真: lehmkuhl.no

スターツロード・レムクルは、商船の航海練習目的で1914年にドイツの造船会社ヨハンC.テクレンボルグAGによって建造された鋼製3本マストの帆船です。当初は「Grossherzog Friedrich August」の船名で 第一次世界大戦中ドイツの航海練習船として使用され、1920年に戦争賠償の一環としてイギリスに移されました。翌1921年、ベルゲンの海運会社Det Bergenske Dampskibsselskabが国務大臣クリストファー・レムクルの支援を受け英国から購入し、1923年よりノルウェー籍の帆船として稼働することとなりました。1905年発足のノルウェー内閣におけるレムクル大臣の尽力と航海練習船への支援に対する感謝の意を込めて、船名が「スターツロード・レムクル」(Statsraad Lehmkuhl=レムクル大臣)に改名されました。

Satsraad Lehmkuhl, history
写真: lehmkuhl.no

スターツロード・レムクルは、ベルゲン船舶学校財団の航海練習船として1967年まで使用されました。このうち第二次世界大戦(1940-1945年)中はドイツに接収され、船体は黒色に塗装、船名は「Westwärts」に改名されました。

船舶学校財団は1966年に財政難に直面します。折しも従来の訓練船への関心は低下しており、運用コストの増加と相まって公的支援の力も及ばず売却の検討を余儀なくされました。

これを受け、スターツロード・レムクルの海外への売却を危惧した船主Hilmar Rekstenは、航海練習継続のために船の購入を決めました。 1968年から1973年の間は、主に自身の船会社のために自費で練習船として運航しました。石油危機とそれに伴うタンカーへの影響の結果、1973年に船はベルゲン港に留め置かれました。その後1978年、現在の所有者で運営を担うスターツロード・レムクル財団に寄贈されました。以来同財団の管理により、ノルウェー海軍アカデミー、船舶学校、企業、組織が船を借り、北大西洋ならびに北海における航海に利用しています。加えて、財団も独自に国内外の幅広い年齢層の一般の人々が参加できるクルーズや沿岸航海を運航しています。

Statsraad Lehmkuhl, history
写真: lehmkuhl.no

スターツロード・レムクルの総重量は1.516トンで、22の帆の総面積は2.026平方メートルに及びます。練習生の収容人数は最大150名(ハンモック利用)で、常勤の乗組員と臨時の追加訓練スタッフの収容人数は最大40名です。 船には推進用のディーゼルエンジンが搭載され(1125 HP)、好天時の速度は最大10ノットです。帆走時の速度は18ノットを超え、高速かつ高度な耐航性を誇ります。スターツロード・レムクルは帆船レースで幾度も優勝し、2008年以降大西洋を高速で横断する際に、帆船レースの最高賞ボストンティーポットトロフィーを複数回受賞しています。 2016年には平均速度12.5ノットを維持しつつ124時間で1548nmの新記録を樹立しました。

強風時に最高の状態で航行すると考えられていますが、練習船として比較的小ぶりに艤装設計が施されているため、微風でも非常に競争力があることが定期的に証明されています。

スターツロード・レムクルは1952年以来、海外は米国まで航海しており、2005年以降は海軍兵学校の士官候補生の訓練航海に毎年利用されています。

2000年には、ドイツ海軍の練習船が修復中だったことから、士官候補生の航海練習用にスターツロード・レムクルが提供されました。またノルウェー海軍にも2002年から同様の目的でチャーターされるなど、各方面で利用されています。

Statsraad Lehmkuhl. history
写真: lehmkuhl.no

スターツロード・レムクルはノルウェー最大かつ最古の横帆艤装船であり、同じタイプとして現役で稼働する最も古い帆船です。

出典:https://lehmkuhl.no/en/about-us/history/