Strd Lehmkuhl Richard Sibley
Satsraad Lehmkuhl Photo:Richard Sibley

ワン・オーシャン・エクスペディション ―《スターツロード・レムクル号》

国連は、2021年から2030年を「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」と定めています。ノルウェーの大型帆船「スターツロード・レムクル」は、この取り組みを支援するため、19カ月かけて地球を一周する「ワン・オーシャン・エクスペディション」を実施します。

One Ocean Expedition

航海の目的は、持続可能な開発における海洋の重要な役割を強調することです。この地球一周の旅では、若者、科学者、国際的なリーダーが一体となって、教育、科学、技術を通じて海に関する新しい知識を構築していきます。船には十分な研究設備が備わっています。

世界一周の様子はオンラインでご覧いただけます。

Statsraad Lehmkuhl
写真:Ole-Morten Algerøy

スターツロード・レムクル号は2021年8月にノルウェーを出発しました。2023年4月までの間55,000海里超を航海します。この間に世界36港を訪問し、アジア初の寄港となる横浜には、パラオ出港後2022年9月12日の到着を予定しています。

ノルウェーのヨーナス・ガール・ストーレ首相は親善大使として、ピーター・トムソン国連事務総長海洋特使、中学生で「子ども気候パネル」のメンバーであるペネロペ・レアさんとともに、航海を支援します。本プロジェクトは、ノルウェー政府、ユネスコ、ユニセフ、ノルウェー国内外の大学や海洋研究機関などの協力のもと実施されています。また、多くの商業パートナーが、直接的な資金提供や現物支給、あるいは世界各地を巡る旅のうち特定の区間のパートナーとして参加しています。

ノルウェー、日本、太平洋諸国、ほか数ヶ国の乗組員と研究者が共にパラオから日本海域を目指すスターツロード・レムクル号の横浜寄港は、持続可能な開発目標(SDGs)への私たち共通のコミットメントの表われです。

Str Lehmkuhl
写真:Hanna Thevik

東京のノルウェー大使館はチームノルウェー(イノベーションノルウェー、ノルウェー水産物審議会、ノルウェーリサーチカウンシル、在日ノルウェー商工会議所)とともに、スターツロード・レムクル号の運営部と協力し、9月12日〜15日の横浜滞在のためのプログラムを計画中です。

この中にはSDGsが掲げるテーマに沿って海洋科学への関心を喚起するためのビジネス、学術セミナーが含まれます。また、海洋・極地研究のプレゼンテーションを目的とするオープンシップデーも予定しています。

Strd Lehmkuhl in port
Strd Lehmkuhl

横浜滞在後、スターツロード・レムクルは9月15日に沖縄の那覇に向けて出発し9日後の9月24日に那覇に到着します。その後9月28日に那覇を出発し、10月1日から7日まで石垣島に滞在した後、フィリピンの首都マニラに向けて出発する予定です。

Satsraad Lehmkuhl, history

歴史的背景と名前の由来

Statsraad Lehmkuhl. history
写真: lehmkuhl.no

スターツロード・レムクルは、商船の航海練習目的で1914年にドイツの造船会社ヨハンC.テクレンボルグAGによって建造された鋼製3本マストの帆船です。当初は「Grossherzog Friedrich August」の船名で 第一次世界大戦中ドイツの航海練習船として使用され、1920年に戦争賠償の一環としてイギリスに移されました。翌1921年、ベルゲンの海運会社Det Bergenske Dampskibsselskabが国務大臣クリストファー・レムクルの支援を受け英国から購入し、1923年よりノルウェー籍の帆船として稼働することとなりました。1905年発足のノルウェー内閣におけるレムクル大臣の尽力と航海練習船への支援に対する感謝の意を込めて、船名が「スターツロード・レムクル」(Statsraad Lehmkuhl=レムクル大臣)に改名されました。

Satsraad Lehmkuhl, history
写真: lehmkuhl.no

スターツロード・レムクルは、ベルゲン船舶学校財団の航海練習船として1967年まで使用されました。このうち第二次世界大戦(1940-1945年)中はドイツに接収され、船体は黒色に塗装、船名は「Westwärts」に改名されました。

船舶学校財団は1966年に財政難に直面します。折しも従来の訓練船への関心は低下しており、運用コストの増加と相まって公的支援の力も及ばず売却の検討を余儀なくされました。

これを受け、スターツロード・レムクルの海外への売却を危惧した船主Hilmar Rekstenは、航海練習継続のために船の購入を決めました。 1968年から1973年の間は、主に自身の船会社のために自費で練習船として運航しました。石油危機とそれに伴うタンカーへの影響の結果、1973年に船はベルゲン港に留め置かれました。その後1978年、現在の所有者で運営を担うスターツロード・レムクル財団に寄贈されました。以来同財団の管理により、ノルウェー海軍アカデミー、船舶学校、企業、組織が船を借り、北大西洋ならびに北海における航海に利用しています。加えて、財団も独自に国内外の幅広い年齢層の一般の人々が参加できるクルーズや沿岸航海を運航しています。

Statsraad Lehmkuhl, history
写真: lehmkuhl.no

スターツロード・レムクルの総重量は1.516トンで、22の帆の総面積は2.026平方メートルに及びます。練習生の収容人数は最大150名(ハンモック利用)で、常勤の乗組員と臨時の追加訓練スタッフの収容人数は最大40名です。 船には推進用のディーゼルエンジンが搭載され(1125 HP)、好天時の速度は最大10ノットです。帆走時の速度は18ノットを超え、高速かつ高度な耐航性を誇ります。スターツロード・レムクルは帆船レースで幾度も優勝し、2008年以降大西洋を高速で横断する際に、帆船レースの最高賞ボストンティーポットトロフィーを複数回受賞しています。 2016年には平均速度12.5ノットを維持しつつ124時間で1548nmの新記録を樹立しました。

強風時に最高の状態で航行すると考えられていますが、練習船として比較的小ぶりに艤装設計が施されているため、微風でも非常に競争力があることが定期的に証明されています。

スターツロード・レムクルは1952年以来、海外は米国まで航海しており、2005年以降は海軍兵学校の士官候補生の訓練航海に毎年利用されています。

2000年には、ドイツ海軍の練習船が修復中だったことから、士官候補生の航海練習用にスターツロード・レムクルが提供されました。またノルウェー海軍にも2002年から同様の目的でチャーターされるなど、各方面で利用されています。

Statsraad Lehmkuhl. history
写真: lehmkuhl.no

スターツロード・レムクルはノルウェー最大かつ最古の横帆艤装船であり、同じタイプとして現役で稼働する最も古い帆船です。

出典:https://lehmkuhl.no/en/about-us/history/